専門医に聞く下肢静脈瘤
TOP > 専門医に聞く下肢静脈瘤 > Vol.4 白石血管外科クリニック 院長 白石 恭史 先生
足に静脈瘤ができると、足が見苦しい、だるい、重い、痒い、痛い、攣(つ)る、などといった自覚症状の他に、むくみを感じる人がたくさんいらっしゃいます。
では、むくみとはなんでしょうか?
なぜむくむの?
「夕方になると足首の上に靴下の跡がはっきりと残る」とか「長く車に乗っていると靴がきつくなる」「向こう脛の骨の上を親指で押さえると凹む」といった状態がむくみです。これは皮下組織の細胞と細胞の間に液体(組織液)が溜まった状態を意味します。
図1 皮下組織細胞に作用するむくみ
健康な人でもむくむ生理的むくみ
足のむくみは健康な人でもおこります。これは人間が直立二足歩行であるために、低い位置にある足が重力の影響を強く受けて、静脈に圧力がかかるからです。

人間がじっと立っていたり腰を掛けていたりした場合の足の静脈圧の高さは、心臓から足の裏までの高さで決まります。高さがあるほうが静脈圧は高くなります。これは筒に水を入れて立てたときに底にかかる水圧(静水圧)が、底から水面までの高さで決まるのと同じです。

例えば、立った状態で心臓の高さが1mであれば1m(=1000mm)の水の柱となり、足の裏の静脈圧は数値で表すと73.6mmHgになります。腰を掛けて心臓の高さが半分の50cmになれば、静脈圧も半分の36.8mmHgとなります。さらに寝た状態では足と心臓の高さは同じで0cmになるので、静脈圧はほぼゼロになります。

静脈圧が高くなると、毛細血管から血液中の水が血管の外へにじみ出し、周辺の細胞の間に溜まってむくみとなります。静脈圧が下がることで、血管の外に出た水はリンパ管や毛細血管に戻ります。寝ているときは前述のように静脈圧がほぼゼロなので、朝起きた時にはむくみが引いていることが多いのです。
ですから、どこも悪くなくても長く立っていたり、腰掛けたりしているだけでむくみは起こるものなのです。これを生理的なむくみと呼びます。
図2 姿勢と足の裏の静脈圧の関係
※mmHgについて
mmHgとは圧力を表す単位です。"Hg"とは水銀のことで、これは圧力測定に適した水銀を利用した水銀柱式血圧計で測定することに由来します。数値が100mmHgであれば、水銀柱を100mm押し上げる圧力があるということになります。
水銀の比重は13.6(水はおよそ1.0)となるため、上記の高さ1000mmの水の柱はおよそ73.6mmHg、高さ500mmの場合はおよそ36.8mmHgとなります。
下肢静脈瘤が引き起こすむくみ
下肢静脈瘤というのは、静脈の弁が壊れて心臓へ戻るべき血液が足へ戻ってしまう病気ですが、足に余分な静脈血が増えると静脈圧がさらに高くなってむくみが起こりやすくなります。それだけではなく、これが慢性的に続くと動脈血が毛細血管より手前で静脈に流れ込む状態ができたり、炎症が起きて足に流れ込む動脈血の量が増えたりするので、さらに静脈圧が高くなってしまいます。図3の左は、慢性的なむくみを放っておいたために皮下組織の炎症がおきて赤く腫れあがった状態です。また図3の右は、皮膚が夏みかんの皮のように分厚く硬くなってしまった例です。
図3 下肢静脈瘤が引き起こすむくみ
ふくらはぎの働き
図4は、足先の静脈に針を刺して測る静脈圧と、空気カフを膝下に巻いて測るふくらはぎ容積の変化を同時に記録したものです。
寝た状態から起き上がると重力によって下肢静脈に血液が溜まり、静脈圧も容積も増加します。その後、一回つま先立ち運動をすると静脈に溜まっていた血液が心臓に向かって押し出されるので、静脈圧もふくらはぎの容積も一気に減少します。しかし、じっとしているとすぐに元に戻ります。さらに続けて10回のつま先立ち運動をおこなうと一定のレベルまで両方とも低下します。ふくらはぎの筋肉を動かすことによる筋ポンプ作用がいかに静脈圧を下げて脚を細くするかがおわかりいただけると思います。
図4 静脈圧とふくらはぎ容積の変化
日常生活でできる対策を
日常生活においては、ハイヒールのように足首の動きが小さくなる靴は筋ポンプ作用が低下してむくみを起こしやすくしますし、膝のサポーターや締め付ける下着を着ると、静脈が圧迫されてそこより先がむくみます。逆に腰掛けている間に貧乏揺すりをすると静脈圧は下がってむくみが起こりにくくなりますし、弾性ストッキングで外から適度な圧をかけるのもむくみ対策として有効です。
治療して健康な脚に
図5の上段は健康人の、中段が静脈瘤の人のふくらはぎの容積変化をみたものですが、静脈瘤の人は静脈の逆流によってふくらはぎが急速に太くなり容積も大きくなっています。
下段は同じ人の治療後の検査結果で、健康人と同等レベルに改善しています。
このように、静脈瘤ができた足は客観的な評価においても健康人と違いがあることがおわかりいただけると思います。自覚症状のある方は積極的に治療をご検討ください。