専門医に聞く下肢静脈瘤
TOP > 専門医に聞く下肢静脈瘤 > Vol.1 慶友会つくば血管センター長 岩井武尚 先生
静脈と健康について
静脈は人間の体全身に張り巡らされていますが、外から見える皮膚直下にある静脈(表在静脈)は、いやでも目につく存在です。そこで、まずその表在静脈と健康とのかかわりについて、さらにその奥にある動脈と並行して走る深部静脈についてもお話したいと思います。
静脈の異常の原因と足への愛情不足
静脈は、健康な場合には蛇行することはありませんから、もし曲がりくねった静脈をみたら異常があると思ってください。(下記『見た目でわかる、4タイプの下肢静脈瘤』をご参考ください)
その異常の原因は、3つあります。一番多いのは、静脈内の弁が壊れて静脈血が心臓の方に向かえないで逆流・うっ血している場合です。二番目は、血の行先に閉塞があるために圧があがって逆流・蛇行している場合です。三番目は、珍しい病気ですが、動脈と静脈がつながって大量の動脈血が静脈に流れ込んできている場合です。また、人工透析では人工的に動脈と静脈のつながりを上肢などに作って透析をしています。

長く診察に携わってみると、見た目の悪い足などの静脈瘤は、長い間ほったらかしにした結果といえます。足への愛情不足です。悪化の原因は、この病気の自然治癒はまずないことに由来します。どんどん悪くなるばかりですから、治すタイミングを逸してしまったといえるかもしれません。多少のつらさはあっても、ズボンをはいてしまえばそれでオーケーと思ってしまいます。病気の隠蔽です。色素が沈着して、かゆくなってきたら決断の時です。むしろ手遅れと言っていいかもしれません。
足の健康を保つために
足の健康管理のためにも、身体検査に足の見かけの検査を加えるのがいいのではないでしょうか。早期治療は、人生を快適にします。足タレントと称する人たちは、足の点検に十分時間をかけています。足のマッサージに工夫を凝らしています。ですからきれいな足を保てるといえます。

足の健康のためには、足を酷使しないことです。普通の人はそういうと、山に登ったり、走ったりするは酷使だと思う人がいるかもしれません。しかし、静脈を酷使するということは、静脈の流れを止めるということです。じっと立ちっぱなし、じっと寝たきり、じっと座りっぱなしでは、静脈は動きません。心臓に向かって動かしてやらねばなりません。歩くこと、足関節を動かすことが大原則です。これを意識するだけで静脈は若返ります。腹式の深呼吸も加えてやってください。
どんな格好でいると全身とくに足から骨盤に流れてくる血がスムースに心臓に戻ってきてくれるのか?
次に、どんな体勢でいると全身とくに足から骨盤に流れる血は、スムースに心臓に戻ってきてくれるのでしょうか?特に意識のないような状態(全身麻酔、熟睡、仮死状態)では、表在静脈ではなくて筋肉のある内部の深部静脈の動きがなくなって、ついには詰まってしまう可能性があるわけです。東京都にある文京学園大学の先生・生徒の協力で、一番スムースな流れの瞬間に挑んでみました。深部静脈が足から骨盤までの間で、圧迫を受ける可能性のある3か所について検討したわけです。
その結果、右の図のような姿勢が望ましいと結論されました。膝の裏での腓腹筋内側頭による圧迫、内転筋管でのひねり、左腸骨動脈による圧迫を避けるには理想的な姿勢といえます。静脈の健康を維持する休憩の仕方として、参考になればと思います。

また、深部静脈血栓症を起こしやすい骨盤の手術や股関節の手術でもこのような姿勢をとっておけば術後の憂いは省かれると確信しております。この姿勢をbeautiful venous flow positionと名付けました。
本来、静脈は全身を守る大きな役目
そんなわけで、静脈と健康と題して語ってきましたが、本来静脈はショックに備えて血液の貯水池のような役目、老廃物を運ぶ役目、体温度を保つ補助、などなど全身を守る大きな役目があるわけです。さらに日常的には点滴や採血をする格好の注射部位となっています。足の静脈瘤などは4つ足動物にはありません(ゼロではありませんが・・・)、このことは、人間は二本脚歩行のために、知らず知らずに負担がかかっているということです。その知らず知らずが、積もり積もって、静脈瘤というような蛇行血管・ぼこぼこ血管をもたらしているといっていいかもしれません。
静脈は美しい~静脈賛歌~
2014年沖縄の静脈学会の時に作った「静脈讃歌」を最後にご紹介させていただきます。それは、静脈は美しいと思うことから始まります。